( 全電感 )

ドン! という大きな音と共に辺りが閃光に包まれた
秀一には 一瞬なにが起こっているのか全く判らない
「 おい、大丈夫か 」亘の言葉で 我に返った秀一は 改めて自分の状況を確認した
俺の持っていた 傘の柄から上の部分はいつの間にか無くなっていた
周りにいた群衆は 好奇の視線を送りながらも やや離れた場所から俺を取り囲んでいる
それも其のはずである 此処は高層ビルの立ち並ぶ都会のど真ん中であり
この様な場所で 落雷なぞ起こり得る筈も無い出来事であった
不意に亘が大きな声で
「 すいませ~ん 今日のパホーマンスは失敗してしまいました 失礼しまーす 」
言い終わるやいなや 俺に傘を差し掛けると 先程まで居たビルの中に俺を引っ張って行く
この機転の速さに驚かされるが 次の物言いがまた こいつらしいと言えばこいつらしい
「 おい、今の雷 コピー出来たか ! 」
こ、こいつー
俺は 亘の肩に手を当てると「 何なら試してみるか ! 」
「 あっ わかった わかったから 」「 俺にデリカシーなんて物を求めるなよ 」
ここまで 先読みされては次の言葉が出て来ない
俺と亘はこのところ 毎日のように このビルに入り浸っていた
此処は俺たちが勤める電力会社の本社ビルで 其の中の情報管理室に出入りしている
一般社員はこのセクションに入ることは出来ないのだが
亘の奴はいつの間にか ここのIDまで持って居やがった
此処に来る目的はと言えば
俺が最近になって自分の放電現象をコントロール出来だした事を知った
亘がこんな事を言い出した
「 秀一、音感は 解るよなー 」「 じゃあ 全音感てえのはどう言う事か解るか? 」
「 ドの音をドの音階として認識出来るのが音感であり
           聴いた音を認識して声や楽器で再現できる能力が全音感てぇこった 」
亘は これを電気に置き換えて 俺に訓練すればできると言うのである
新しい玩具を見つけたかのごとく 亘はひとり はしゃいで居るが
俺としては そんなに気乗りはしない さりとて 放電の暴走が起こらないという保障が無い為
渋々 此の実験に付き合わざる終えなかったのが 実情である
第一ステップは
乾電池から始まり 家庭用100V、工業用200Vと順調にクリア出来たのだが
第二ステップでは
通信データ等のデジタル微弱信号を読み取れという 難問に突き当たった
当初は単一信号を何度も反復し それをパソコンに送る作業から始めたのだが 如何せん
上手く出来なければ パソコンがショートして何台ものパソコンをオシャカにした
要約 廃棄パソコンの山が積み上がらない様に成ると
次は 第三ステップとして
ここ電力会社の本社ビルの情報管理室で 大量データの蓄積実験を開始したところである
感覚的には データ信号を音に近いものとして感じられるが
                     意味としての解析はまだ出来ない
要するに 色々な外国人に周りで話しかけられても 理解できる物ではないと言う事だ
亘にもそこの事情は 理解出来るようで
今の所は記憶媒体に徹して 脳のシナプスを育てることに専念して居れば良いと言う
ああ、俺は何処へ向かうのか 徐々に 自分の思いとは別に 人間離れしているようにも思える







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2017.02.20 Mon l リリカルSF小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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