( サイバー・テロ )

此の日 秀一と亘は 最新鋭の原子力発電所の見学に来ていた
見学と言っても 実情は内閣調査室の槇村次官の指示に拠るものだった
与えられた情報としては この原子力発電所の稼動当初から
ちょくちょくメインコンピュータのシステムに入り込もうとする輩がいたのだが
此処最近 そのサイバー攻撃の質と量が激増し キナ臭いものを感じ取った内調が
俺達二人に 調査及び対策の検討を依頼して来たものである
ウィーン ウィーン ウィーン 亘が取り付けた 警戒システムが作動した
「 お呼びの様だぜ 」「 承知っ 」
「 秀一、先ずはこのパッドを両手で持ってみてくれ 」
「 どうだ 判るか? 」
「 おぅ 感覚は微弱だが なんとなく読み取れそうだ 」
オブザーバーとして同行している 内調の三木が 亘に囁いた
「 一体 沢嶋君は 今何をしているんですか? 」
「 電気信号は 波長の強弱を長い紐の様に綴ってるもんなんです
            秀一は今 その紐を手繰ってる最中と言った所ですか 」
「 まっ、ぶっちゃけ 人間受信機と言った具合ですよ 」
「 秀一 どうだ 発信源まで辿れそうか? 」
「 ああ もう少し待ってくれ 」
・・・
「 なんだか 色んな国のサーバーを渡り歩いてるぜ 」
「 うん、此処だろう、発信源はどうやら K国みたいだぜ 」
「 秀一 取りあえず あちらさんの情報を片っ端から引き出してもらえるか 」
「 判った、しかし 俺の記憶量にも限界ってもんがあるぜ 」
「 そうだな それじゃ 秘匿度の高い通信記録だけにしておこう 」
「 おう 」
「 三木さん、この後 あちらさんのシステムにウイルスでも送って
              しばらく 大人しくして貰おうと思うが どうする? 」
「 ウイルスって ハッキングするほどの てだれに通用するのか? 」
「 向こうも その辺は十分なセキュリティを張ってるんじゃないのか? 」
「 その辺は 心配御無用 秀一に掛かれば 一発でノックアウトですって 」
「 まっ、郵便受けに手紙を入れるか 相手の部屋で手紙を書くかの違いですわ 」
「 秀一、回線を切り替えるから こっちのメモリーに情報を落としてくれ 」
「 わかった 」
「 もういいか? 」「 おう いいぜ 」
「 じゃ 今度は俺の作ったウイルスを読み込んでくれ 」「 切り替えるぞ 」
「 亘、随分と短いんじゃね~か 」
「 だらだらと 長けりゃ良いってもんじゃねーんだよ 」
「 要は 見付けにくくて増殖さえすれば
      それに お前に任せれば セキュリティ対策は考えなくて良いからな 」
「 三木さん、やっちゃって良いかな? 」「 いいですよっ 」
「 お~い 秀一、OKが出たからプレゼントを贈ってやれ 」
「 さて、此れで暫くは 大人しくなんだろ 」
「 三木さん、秀一がかっぱらった情報は 貴方にお預けします 」
亘はメモリーデバイスを引き抜いて「 どうぞ 」と手渡した
ビーッ ビーッ ビーッ 館内にけたたましい音が鳴り響く
「 何だよ 」
コントロール・ルームのオペレーターが大声で叫ぶ
「 電源制御システムが コントロール不能です 」
亘も声を荒げて「 手動に切り替えろ 」
「 切り替えスイッチが利かないんです 」
「 たくぅ、・・ 」
亘は 急いで制御盤の裏側に廻ると ケーブルを引き出しては
「 こいつを切り離して 単独運転に移行する 」
「 秀一、もう一仕事やってくれ
       このバッテリーパックを繋いで時間を稼いでいる間に
                      小型発電機を用意させるから 」
実は、バッテリーパックはあくまでカモフラージュで
                 本当の電源は( 秀一 )自身であった
「 秀一、判ってんなっ 」「 ああ 」「 頼んだぜ 」
「 全く 電気が無けりゃ動かねー 発電所って如何なんだ 」
「 これも 多分あちらさんの 仕業じゃね~かなっ 」
「 物量で来られてちゃ 此方は二人だけだかん あたふたしちまうぜ 」
やがて 運びこまれた発電機を取り付け 要約 秀一は解放された
亘は 強い調子で言い放つ
「 三木さん、今回は何とか切り抜けましたが
           今後もサイバー攻撃は繰り替えされると思います 」
「 正直、最新鋭の原発にしては
        電源制御システム等が余りにもお粗末ですね 」
「 多田倉くん 君の意見は最もだ 直ちに改善を具申しよう 」
「 かぁ~ お役所の答弁ですね 本当に大丈夫なんですか 」
「 私も今回 身を持って経験したから その危うさは十分解っているつもりだよ 」







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2017.02.20 Mon l リリカルSF小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top


wasp
◎ 《昆虫》ハチ:スズメバチ科, ジガバチ科などの大形のハチの総称
◎ 怒りっぽい[短気な]人, 気むずかし屋
◎ 刺す[刺激する, 激怒させる]

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           ブルーワスプ

            ( プロローグ )

ブォゥーン ブォゥーン
エアーダクトの重苦しい音だけが 辺りを支配していた
「 和人 ここに座って 」
「 ごめんね こんな事になってしまって 」
玲子の言葉に 和人は 静かに かぶりを振った
いくつかの 照明は壊れ 薄暗い部屋を見渡すと
つい先程まで 整然としていた 室内が 台風の通り過ぎたが如く
あらゆる物が散乱し 見る影も無い状態であった
しかし その中で ドアに描かれた
   蛍光色のバイオハザードのレベル表示だけが くっきりと浮かんで見える
俺の名は 剣崎和人 この研究施設で 同僚の 立弓玲子と共に
           アナフィラキシーショックの研究に就く 研究員である
毎日、ふたりだけの隔離状態で過ごす内
         二つ年上の玲子とは それなりの関係を築いている
この惨状に至った 事の起こりは 玲子がガラス容器を落とした事から始まった
ガシャーン・・・
ブゥーン、   ブゥーン、
ガラス容器に入って居た スズメバチが 玲子目掛けて襲い掛かる
俺は咄嗟に 傍に有った書類を丸めて スズメバチを叩き落とそうとするが
スズメバチは 事も無げに 俺の攻撃を交わし 今度は俺に向かって来る
俺は 丸めた書類を 有らんばかりに振り回し 抵抗するが
     そうこうしている内に スズメバチが 俺の視界から忽然と消えしまった
「 あちっ 」
焼ける様な痛みと共に 書類を握った右手の親指に スズメバチを見止めると
その時、異様な怒りが 俺の中で爆発的に込み上げてくる
俺は スズメバチを左手で 鷲掴みにすると 床に叩き付け
更に足で原型を止めぬ程に踏み付けるが 尚も 怒りが次々と沸き上がって来る
意識下では 醒めているのだが
        この衝動を どうしても抑える事が出来ないで居た
衝動に操られる様に この怒りを昇華する為だけに
俺は 身の回りに有る 器物をことごとく 破壊していった
「 和人! 」 玲子に背後から 抱きすくめられ
玲子の声が 頭の中で響き渡る
俺の全身から 力が抜け 俺はその場で 膝を突いて静止する
先ほど 俺を刺したハチは 研究の過程で遺伝子操作によって生み出された
青味かがった ハイブリッドのスズメバチであったのだ
「 和人、手を見せて 」
「 それにしても、いつもの和人らしくもない 暴れ様だったわね 」
「 そんなに 激しい痛みだったの? 」
「 いや 痛みと言うより
       得体の知れない衝動に ただ突き動かされた感じなんだ 」
スズメバチに刺された 和人の右手の親指は
      腫れは然程でもないが 付け根から指先にかけて やや黒ずんでいた
「 命に別状が無くて良かったけど 指はタオルで冷やして
       とりあえず アドレナリンのアンプルを打って
                  少し このソファーで横に成って居てね 」
和人は 玲子にアドレナリン注射を打って貰うと
           ソファーに身を横たえ 静かに 目を閉じた
ブゥーン、   ブゥーン、ブゥーン、   ブゥーン、
耳元で スズメバチの羽音が 和人の意識を苛む
どれ程の時間が経ったのであろう
          和人はうなされながら 額に手を当てた
「 おうわー 」
近くで片付けをしていた 玲子が駆け寄り「 和人、どうしたの、」
「 右手 」
和人は 玲子に向かって 自分の右手を差し出した
玲子が 親指の方に視線を移すと 指に黒くて艶々とした物が着いている
「 触っていい 」「 ああ 」
玲子の指先に触れる この物体は 角の様に硬く反り返り
      和人の親指の付け根から 生えている様にも思える
実際、この部分は 和人の親指であり それが変化したと考える方が妥当であろう
「 私じゃ 手に負えないから 私の恩師に相談してみましょ 」

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              ( 毒針 )

カタン、カタン、、、カタン、カタン、、、
和人と玲子は地下鉄に乗り込み 玲子の恩師である 須田教授の元へと向っていた
須田教授は医学会の重鎮であり 遺伝子操作の始祖とも言える方である
和人は車両の片隅で 片手をタオルで巻き それを抱えるように座っていた
玲子は そんな和人を覆い隠すように 和人の正面に立ち
つり革に摑まっているのだが
車内には人が少なく、 むしろ余計に目立つ存在と思える
やはり 二人の動揺が こうした行動を自然と選んでしまったのであろう 
プシュー、
電車のドアが開くと同時に 二人は足早に ホームを後にした
改札を抜け 地上に駆け上がると
最早、辺りは ネオンと漆黒の闇に映しだされている
表通りから 少し仄暗い路地に曲がると 声を掛けられた
「 兄ちゃん、すこしばっか 金貸してくんない 」
通常であれば こう言う輩の絶好のカモであろうが この日の和人は
いきなり、声を掛けたチンピラに前蹴りを放った
男は まるで映画のワンシーンの様に 表通りの植え込みまで吹き飛ぶ
「 ほ~っ、中々やるんじねっ 」
「 俺は あいつの様にはいかねーと思うが やるかいっ 」
和人は無言のまま 相手に回し蹴りを繰り出した
今度の相手は 相当場慣れしていると見えて
和人の蹴りを いとも簡単に交わして見せる
「 兄ちゃん、何だか顔色が青いようだけど 」
又も 和人は無言のまま 相手に回し蹴りを繰り出すが
やはり 相手はすんなりと身を交わす
其の刹那! 和人はタオルで包まれた 右手を相手のわき腹に突き立てた
「 なんでぃ えものを持ってたのか? 」
「 大して 痛くもねーぞ 」
「 ん! アッ ガ アガッ 」
男の顔面は見る見る 赤くはれ上がり
アナフィラキシーショック特有の症状を呈していた
「 和人、」
またもや 玲子の一言で和人は我に帰る
「 玲子っ、抗ヒスタミン・アンプル! 」
和人は玲子から 注射器を受け取ると 男の腕に注射した
「 応急処置は此れ位しか出来ないし・・・ 」
もちろん、二人とも臨床医として医師免許は持ってはいるが
このまま 男を病院に担ぎ込むにも 事の成り行きを説明できない
先ほどの もう一人は と 辺りを見回すが 既に逃げ去っていた
玲子が「 ちょっと 待ってて 」
玲子は 少し離れた場所に有る 公衆電話の緊急通報のボタンを押すと
「 もしもし あの~ 良く分からないんですが
                  男の人が 道に倒れています 」
ガチャン、
「 初期手当ては出来てるから 救急車さえ来れば 軽症で済むと思うし 」
「 和人、あたし達は 早く 教授の所に急ぎましょ 」


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              ( 教授 )

ピンポーン♪
「 はい 」
「 立弓です、夜分にお伺いして 申し訳ございません 」
「 玲子君か カギは開いてるから 入りたまえ 」
ガチャ、
玄関のドアを開けると 金縁眼鏡の初老の教授が立って居た
教授は 豪奢なナイトガウンを羽織り
        其の腕の中には毛足の長いシャルトリューが抱かれている
ニャー、フッフッ、シャー!!
「 これこれ エンドラ、何をそんなに興奮してるんだい 」
ニャーゴ ・ ・ ・ パタン、トン
「 困った子だね・・・何時もなら大人しいんだがね 」
教授に抱かれていた猫は 声を上げると 家の奥へと走り去った
「 まあ、立ち話もなんだから 奥に上がりたまえ 」
「 はい、失礼します 」
応接室に通されると ソファーに腰掛けながら 教授が口火を切る
「 なんだね 相談というのは 」
「 まっ、座りたまえ 」
「 今日は 家内が出払っているから お茶も出ないよ 」
「 いえ、お構いなく 」
「 実は、教授に見て頂きたい物が・・・ 」
玲子は目配せを送りながら 「 和人 」
「 これなんです 」と和人はタオルに巻かれた右手を差し出した
「 ほほぉう どうしたんだね 此れは 」
「 私達の研究材料のハイブリッド・スズメバチに
      この人が親指を刺されて 細胞変態を引き起こした様なんです 」
「 ほ~ これは 貴重な物を見せて頂いた 」
「 で、君達の相談とは 何かねっ、 」
教授の突き放した物言いに 和人は立ち去ろうと膝に手を掛ける
玲子は そんな和人の行動を読んでいた様に 和人の手に手を乗せると
「 先生にご相談と言うのは この症例の細胞分析を
     是非とも 先生にお願いしたく 夜分に押しかけた次第です 」 
「 そういう事なら 遣らんでもないよ 」
「 僕は また 君達が (なんとかしてくれ) などと
           言い出すんじゃないか ビクビクしてたんだ 」
「 大体、僕の事なんかを買い被っちゃいけないよ 」
「 一見するに その黒い部分は ハチの針の様じゃないか 」
「 蜂から 針を取ると 如何成るか知ってるかい 」
「 死んじゃうんだよ 」
「 それでも 切り落としてくれと言うなら
           実験体として 切り落としても良いけどね 」
「 どうだね、切ってみるかね 」
「 いえ、細胞の分析の方をお願いします 」
「 そうか 僕もその指を眺めているうちに
         切り落として 培養してみたい衝動に駆られるんだが 」
「 細胞だけでも摂取培養が出来るかもしれないから
         来週にでも 大学の研究室に出向いて貰えるかね 」
「 はい 判りました では 来週、大学の方に伺います 」
・・・
帰り道で
「 なんとも 食ぇ無ぇおやじだなぁ 」
「 須田先生は慎重で感に触る物言いだけど
           私達は 実力では足元にも及ばないもの 」
「 和人、くれぐれも先生に対して 切れちゃ駄目よ 」
「 先生は医学会のドンなんだから
      その豊富な人脈と資金を味方にすれば きっと元に戻れるわ 」
「 逆に、先生の怒りを買えば 私達なんか 簡単に潰されちゃうもの 」



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              ( 女王蜂 )

コン、コン、「 失礼します 」
「 おっ、来たかねっ、玲子君 」
「 君達の事は 此処に居る 高木助教授に任せて有るからね 」
「 高木です 」
「 立弓です 」「 剣崎和人です 今日はお世話になります 」
「 剣崎さん 早速ですが 患部の方を拝見できますか? 」
和人は 右手にはめていた白い手袋を外し
「 よろしくお願いします 」と 高木の目の前に差し出した
「 高木君、後は頼んだよ 私は医局の方に居るからねっ 」
「 あっ、はい 承知しました 」
高木は 和人の黒光りした親指を暫く眺めると 近くのワゴンに手を伸ばし
カチャ カチャッ カチャ
「 患部の細胞を少しメスで削りますが
        もし、痛みが有れば言って下さいね 」
「 はい 」
キーッ キーッ 「 う~ん 」キャキャキャ キ~
「 どうにも メスでは 歯が立ちませんね 」
「 今日の所は 口の粘膜細胞の採取だけに 留めて置きましょう 」
ワゴンからシャーレと細長い綿棒を取り出すと
「 はい、口を開けてくださいね 」「 はい 」
「 今日は 其の後 血液を採取して
   エックス線検査とMRI検査を受けて頂き
      検査結果は約三週間後に
          こちらから連絡を入れると言う事で宜しいでしょうか? 」
「 はい、結構です 」
・・・
和人がMRI検査を受けている間 玲子は通路の長椅子に座り
バッグの中から容器を取り出し 何かを口に入れた時
通りがかった高木が 容器を指し示して
玲子に「 どこか お身体でも悪いのですか? 」と声を掛ける
「 いえ これは 私が開発中の美容サプリメントなんです 」
「 女王蜂がずっと産卵出来る 活力の秘密を探り当てたいと
      特異成分を凝縮して サプリメントに仕上げましたの 」
「 もちろん動物実験も終了して 自身で試験的に使っているのですが
    ひょっとしたら 中毒症状なのか
           此の頃では 無意識に口にしているかもしれませんね 」
「 気を付けて下さいよ 僕達の行なっている遺伝子操作の研究は
               自然の摂理から逸脱しているのですから 」
「 はい、ありがとうございます 」
「 今回の和人の件と言い もっと慎重で在つて しかるべきですわね 」
・・・
大学病院からの帰り道
「 和人、私 今日 高木さんに言われて 初めて気がついたんだけど 」
「 私の使ってる サプリメントって 女王蜂エキスじゃない
     だから 其の所為で和人の暴走を止められるんじゃないかと? 」
「 ふぅ~うん そう考えると 辻褄は合うなっ 」
「 キャッ・・・ ギャギャギャッ ブォーン
車道側を歩いていた 玲子の横に白いワゴン車が急停車すると
瞬く間に 玲子を車内に押し込め 車は呻りを上げて発進する
窓越しに垣間見えた 男の顔は 紛れも無く
以前、和人が毒針を刺した 輩であった
和人は声を張り上げ「 仕返しの心算なら 俺だろが 」
しかし 車は スピードを上げて走り去る
「 くそ~っ 」
和人は咄嗟にポケットから携帯を取り出し GPSで玲子の携帯を探った
「 よし、これなら追跡出来るぞ 」
しかしながら 徒歩と言う訳には行かない 和人は当たりを見回し
やや離れた場所に レンタカーの看板を見つけると一目散に走った
バタン、キュルキュル ゴーッ
レンタカーの契約を済ませ GPSを頼りに玲子を追いかける
携帯の位置は真っ直ぐに港方向に向っていたが
途中から やや逆戻りを始めた
携帯の位置が近づくにつれて
和人の頭の中で「 ちがう、こっちだ! 」と誰かが囁く
和人は次第に玲子の居場所を 確信めいた感覚で捉えると
バンドルを切り 行き着いた場所には 輸入コンテナがあった
「 此処に居る! 」
コンテナのドアには鎖が巻かれ 南京錠が施されている
和人は 近くに有った角材を鎖の間に差し入れ 渾身の力を込めて引いた
メキメキ、バキッ ドサッ
角材は折れ 和人は勢い余って後方にひっくり返る
「 うぉ~っ 」ゆっくりと立ち上がった 和人の形相は
青味を帯び 頬から黒い筋が一本 浮き出ていた
何を思ったか 右手の黒い突起を閃光のように南京錠に振り下ろすと
ガシャン ガコーン
南京錠は形をとどぬ程に 引き裂かれ地面に落ちる
キィー
「 玲子、居るかっ? 」「 和人、どうやって此処へ 」
「 女王様の居場所は兵隊バチには判る見たいだぜ 」
玲子の声で 顔色は元に戻り 普段どうりの受け答えを交わす
「 あいつ等、如何言う心算なんだ 」
「 とにかく 此処を出ましょ 」
和人は 携帯でハイヤーを手配すると
「 玲子、直ぐにタクシーが来るから 其れに乗って
                    先に 帰っていてくれ 」
「 和人、彼方は如何するの? 」
「 この際、あいつ等とケリを付けとかなきゃなっ 」
「 玲子の携帯の入ったバックも あいつ等が持ってる様だし 」
「 和人、駄目よ あんな奴らに関わっちゃ 」
バタン、ドリューン
玲子の制止を振り切り 和人はGPSの指し示す場所へと 車を走らせる
・・・
「 しかし あの女 財布に結構な 現金を入れてんじゃね~か 」
「 あはははっ、今頃 男の方も顔が青ざめてんぜ 」
「 そう言ゃあ この間も 青い顔をしてたな 」
「 もうしばらく 焦らしてから 身代金でも頂くかっ 」
「 女の方も もちろん 頂くんでがしょ 」
「 そりゃ もちろん 頂いちゃいますよ 」
和人は 程無く 人気の無い雑居ビルの一室で 男達を見つけた
彼らを目にした途端 和人の中で蒼白い炎が燃えたぎるのを感じる
ドアを蹴破り 瞬時に男の背後に張り付くと
「 何を 頂くのかなっ 」ドスッ!
奴らは 三人組であったが 残りの二人にも次々と毒針を見舞い
「 ううっ 」「 ぐふっ ぐっ 」「 いで~っ 」
和人は 未だ元気そうな男の顎を持ち上げ
「 おい、早く 医者にいかね~と 死んじまうぜっ 」
「 おっと このバッグは返して貰うよ 」
バタン!



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               ( 激変 )

高木助教授より連絡が入り いよいよ明日、検査の結果を聞きに行こうという矢先
朝、和人はうなされ、浅い眠りから覚めると
「 おおっ 」自分の手を繁々と眺め
居ても発っても居られず すぐさま玲子に 電話を入れた
「 玲子、大変だっ 」「 一体どうしたの? 」
「 指が元に戻ってる 」「 えっ、本当なの? 」
「 ああ、こんな事 嘘ついても始まらないだろ 」
「 今から 研究室に行くから 君の目で確かめてくれ 」
「 本当なら こんな嬉しい事って無いわねっ 」「 ああ 」
・・・
研究所に着くと 玄関前で玲子が待っていた
「 和人 」「 玲子、中で待ってれば良いのに 」
「 早く、見せて 」
和人が右手を差し出すと 玲子は熱心に親指を 根元から順番に押さえ
「 本当、まったく普通の指に 戻ってる 」
「 毒素が中和したのかもしれないわね 」
「 なんにしても 此処一月半の重苦しい気分が 一気に晴れたよね 」
「 でも、未だ全面的には 安心出来ないんじゃない 」
「 う~ん、そうかなぁ 」
「 取りあえず 高木先生の検査結果を聞いて
           今の状態と照らし合わせて貰いましょ 」
・・・
翌日、大学病院に赴き 診察室で高木助教授に指を見せると
「 指の外観は殆ど異常が見られませんね 」
「 前回のデータでは X線、MRI共に組織の異常を示していたのですが 」
「 粘液細胞の検査においても 一部の染色体に異常増殖が認められています 」
「 外観はともかく もう一度 粘液細胞と血液の検査をしましょう 」
「 もしそれで 異常が無ければ 私も元に戻ったと確信できます 」
「 はい、よろしくお願いします 」






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